2019年度全国農業新聞連載「戦略論の裏の裏側」Ⅶ

2019度連載用ロゴアウトライン.jpg



★「得する人」と「損する人」に
★「逆淘汰」の組織腐敗構造



 一方、「アドバース・セレクション」で言う理論とは「逆淘汰」とも訳される組織腐敗の構図だ。
もとは保険業界から派生した用語らしく、たとえれば、こんな話になる。

  ――とある保険会社が「1日千円の掛け金で、治療費全額保証の保険商品」を販売し始めた。毎日病院に通う不健康な人にとって千円は安い。だが、いたって健康な人にとって千円は高い。結局、保険に入るのは不健康な人だけで、健康な人はいっこうに入らず、保険会社は「不健康な人に保証金を払うばかり」の事態に陥いることになる――。

 こうした状況を組織論に置き換えたのが「アドバース・セレクション」だ。

 たとえば、組織編成で人格に劣る者が役職者に就いた場合、いつの間にか役職者たちが自らの懐ばかりに利益を誘導し、それ以外の者はまったく利益にあずかれない、というような状況を生起することがある。

 これは、直売所の運営などでもよく聞く話で、役職者たちが「よく売れる場所」や「よく売れる商品分野」を独占してしまい、一般の出荷者には手を出させない、といった類の話だ。

 そのため、組織内には「得する人」と「損する人」が同居することになり、そのうちに「損する人」――中でも良い農産物を持ち込む意欲満々の出荷者は不利益を強く感じるから組織を去るし、逆にいい加減な農産物を出すだけの無気力な出荷者は何も感じないから、役職者たち(得する人)の言いなりになって組織に居残り続けることになる。

 要は、組織に居るべき「良い人」がいなくなって、組織に居なくていい「悪い人」ばかりが残るという「逆淘汰」の事態に陥るわけで、これがいずれは、戦略を頓挫させるような組織腐敗へと発展していく。

 モラル・ハザード(理性喪失)もその一つだろう。不平等を批判したり正論を言うような人をいじめたり、追い出したりしていく行為が組織内に蔓延していく…。
 さらには、違法な事業に手を染めるコンプライアンス(法令遵守)無視の温床にもなっていく…。
もちろん、これは農業界に限ったことではなく、行政・団体・民間すべてに共通する問題で、こんな腐敗状況では戦略遂行などぜったい無理な話なのであるが、さてさて読者の周囲に存在する事業や組織はどんな状況にあるだろうか? 

 「コスト」や「アドバースセレクション」の理論に照らし合わせてみれば、おそらくは、これに符合する欠陥事業や欠陥組織があまりに多く存在することに気づかされるはずである。


資料⑦アウトライン.jpg



ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

ナイス

この記事へのコメント