2019年度全国農業新聞連載「戦略論の裏の裏側」Ⅵ

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★様子見から希望的観測へ
★一致団結しない「及び腰」




 「農業界独特の平等意識」と並んで、「組織編制」を阻害するもう一つの要因――「普遍的な心理」については、1990年代の戦略論などで提唱されはじめた「コスト」や「アドバース・セレクション」の心理的な理論でおおむね説明がつく。

 「コスト」とは――事業や組織の継続が危機的な状況にある場合、本来これを回避するために機構改革を早急かつ全面的に実施すべきなのだが、それには「物理的コスト」だけではなく、目に見えない「労力的コスト」も膨大に必要となる。

 たとえば、機構改革のための情報収集や改革構想の具体化、関係者への意識啓蒙や合意形成、周囲機関への目的変更届などだ。
 …ならば、いっそのこと、改革など諦めて「撤退・廃業」という選択肢も浮上するのだが、その場合、今度は「埋没コスト」の問題にも直面する。これまで投じたコストを「すべて無にする選択」だが、そうなれば、どこかの誰かが責任を問われるという問題も出てくる。

 結局、改革するにも膨大な物理的・労力的コストが必要だし、「撤退…」するにも膨大なコストが埋没するのだから、「それなら現状のままもう少し様子見で」という判断から「そのうち何とかなるかも」という希望的観測が生まれていく――これが「コスト」理論だ。

 たとえば、自治体が運営する「道の駅」があって、それが赤字続きであっても、いっこうに改善されないことがあるが、これも「コスト」理論で説明がつく。
 赤字の原因は大方、「設備が時代遅れになっているか」「事業内容が消費動向にマッチしていないか」であり、自治体でもそのことを十分に承知している。
 だが、改革するには膨大な労力的コストがかかるから面倒くさい。廃業を言えば、埋没コストの責任を問われる。だったら臭いモノには蓋で何もせず、「いずれは黒字になるかも」という希望的観測に流れて、赤字はさらに連鎖していく。

 農業界で戦略組織を編制しても、実際には構成員の多くが「様子見」になるのも、これと同じ心理だ。

 激変する環境や戦略の必要性は理解しても、これに対応するには自らの農業経営自体にも改革が必要で、それには各種のコストが必要だし、また、これまで学んできた技術や知識が埋没する可能性も出てくる。
 「だったら今のままでもいいかも…」という観測から大方が「及び腰」になり、深層心理では「一致団結しない(できない)組織」が出来上がる。だが、これではもはや「烏合の衆の寄り合い所帯」でしかないだろう。(つづく)


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