2019年度全国農業新聞連載「戦略論の裏の裏側」Ⅱ

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★農業界に戦略など不要?
★失敗要因は政略か組織に


 もう五、六年前にもなるだろうか、首都圏のとある著名大学で開催されたシンポジウムでの話である。
 壇上には筆者を含めたパネラーが数名。各自持ち時間20分間ずつで地域農業活性化への持論を順番に披露し、その流れで筆者も戦略論の概要を話した。

 ところが、パネラー最後の真打で登場した某大学の名誉教授が、自ら関わる地域のイベント事例を話した後、唐突にもこんな発言を付け加えたのである。
 「…最近、農業界でも戦略を言う人が増えましたが、ほとんど成功せず、失敗に終わっています。農業界に戦略なんて不要。農業者たちには、戦略なんかより、すぐに取り組めるような『小手先の戦術』だけ教えればいいんですよ…」

 残念ながら構成の都合上、これに反論する機会はないままにそのシンポジウムは閉会してしまったのだが――あまりの発言内容に唖然となってしまった。
 「農業者たちには『小手先の戦術』だけ…」という言い方はあまりに農業者を馬鹿にしていないか…。
 いや、それ以上に唖然としたのは、失敗の要因を明らかにしないまま「戦略は失敗…不要」という一言で片づけられたことだった。

 なるほど、確かに、それまで農業界で実施されてきた戦略は失敗に終わっているケースが多かった。
だが、その根本的な要因の9割方は、戦略のコアな部分にあったのではなく、戦略を構想する前段階として必要な「政略もしくは組織編制に不備があった」というのが正確である。

 そうした実情を顧みることなく「戦略は失敗…不要」と決めつけるは短絡的だし、頭ごなしの暴言と受け止めざるを得ない。
そもそも戦略とは政略の延長線上にあるのだから、その地域における政治的環境――政略が失敗していれば、いかに綿密で高度な戦略を構想しようとも、うまくいくはずがない。

 また、戦略の行動単位として編成される組織で、才覚や人格に不相応な人物がリーダーに就いたり、組織の体質に不条理が生じた場合などでも、戦略は実施の段階で空中分解する。

 ゆえに講演でもその点を説明しているつもりなのだが、大方の地域は政略や組織編制を軽視して、いきなり戦略の具現化へと走り出す……これでは失敗に終わっても当然だろう。

 そこで、この場を借りて戦略失敗の最大要因になり得る政略や組織編制をあらめて説明したいと思う。
まずは政略の部分――その地域がいかなる政治的環境にある場合、戦略は失敗に終わるのか――次回、詳細に述べたい。(つづく)



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